【獣医師コラム File:11】犬がご飯を食べない理由と対処法!病院に連れていく目安は?
佐野先生コラム2

今回は、ワンちゃんがご飯を「食べない」理由について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

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うちの犬も、半分しか食べなかったり、ご飯の時間に呼んでも来ない日があったりして、とっても心配していました!佐野先生、お願いします!

食事が大好きな飼い主さん(勝手に決めつけて申し訳ありません<笑>)には「なんで食べないの?」と不思議に思うこともあるかもしれません。
 
もちろんワンちゃんも体の不調や異常があれば食欲がなくなってご飯を食べたくなくなるということは当たり前のようにありますが、それ以外の理由でもご飯を食べない時があります。
 
どんな時?という不安を少しでも解決できれば嬉しく思います!
 

犬がご飯を食べない理由

ワンちゃんがご飯を食べない理由にはいくつもの事が考えられます。
 
まず、一番心配になるのが「病気」です。いろいろな病気が原因で食欲が少し減る〜全くなくなるまでワンちゃんの食は影響を受けます。
 
そのほか、神経質なワンちゃんであれば、

  • 環境が変わった
  • 食器が新しくなった
  • 季節の変わり目

などによっても、ご飯を食べなくなります。
 

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病気だけが原因ではないのですね。ここまでお聞きしてちょっと安心しました。

もちろん、我々も感じますが、加齢による好みの変化や、食事が合わない、単に食欲がないなど理由は様々です。
 

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ご自身が「食欲がなくなるな・・・」という状況を少し思い浮かべていただくことが、気づきの第一歩になるかもしれませんね。

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自分自身に置き換えて、食欲がなくなる理由を考えてみるなんて思いつきませんでした!

犬が食べないときの対処法

ワンちゃんがご飯を食べない時、その理由を明らかにし、原因を改善することが大事です。
 
その過程の中で、気をつけて欲しいことが3点あります。
 
①急に食べなくなったのか? 徐々に食べなくなったのか?
②今まで喜んで食べていたものを「急に」食べなくなったのか?
③ご飯の種類や食器などを新しくして、食べなくなったのか?
です。
 

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犬がご飯を食べないときには、変化のタイミングや、最近のできごとまで思い出すということですね!

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特に、今までちゃんと食べていたものを急に食べなくなった場合、何か大きな異常の存在(体の問題かもしれませんし、心の問題かもしれません)が隠れていることがあります。すぐにかかりつけの動物病院の先生に相談することをお勧めします。

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わかりました!今まで食べていたものを急に食べなくなった場合は、迷わず動物病院に行きます。

犬の食欲が減る / 全くなくなる原因には、大きくわけて2つの影響が考えられます。
 
<精神的な影響>

  • わがまま
  • 食感や味、香りが合わない
  • 警戒心やストレスを感じている
  • 加齢
  • 好みの変化

 
<身体的な影響>

  • 加齢
  • お腹がすいていない
  • 病気

 

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それぞれの対処法というか、考え方について解説していきますね。

精神的な影響で、犬が食べない場合

「精神的な影響」のうち

  • わがまま
  • 食感や味、香りが合わない
  • 警戒心やストレスを感じている

は、これまで食べていたものを、「急に」食べなくなる、他のものなら食べるけど普段のフードは食べない、手からあげれば食べるけど、食器からは食べない など
動物の状態は元気であって、何で食べないんだろう?という感覚になることが一般的な特徴です。
 

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なるほど!あくまでも体は元気なのに、というときですね。

方法としては

  • 根気強くあげ続けてみる
  • ストレスの原因となっているものをなくす(静かな環境に置く、元の食器に戻す、食器を洗う洗剤を元に戻す などなど)
  • ふやかす、おやつをトッピングするなど少し嗜好を変えてみる

で対応してみるのがいいでしょう。
 

佐野先生コラム1

えっ!洗剤の種類まで影響するなんて考えたこともありませんでした!犬の嗅覚ってすごいですね…

佐野先生コラム2

何か気に入らない、食が進まない原因が、それぞれの改善の試みで合致すれば、急に、普段のように食べてくれるようになると思いますよ。

佐野先生コラム1

早速見直してみます!
でも、もし色々試してみても変化がない場合、他にどんな可能性がありそうですか?

精神的な影響でも

  • 加齢
  • 好みの変化

は急に起きるというよりは、徐々に徐々に気づけばあんまり食べてないな?という感じの食欲の減り方が特徴です。
 

佐野先生コラム1

やっぱり普段から観察することが大切なんですね。

加齢による食欲というのは非常に難しく、ものすごく食欲が増える子もいれば、少しずつ減ってしまうという子もいます。
 
歳だからあまり食べなくても仕方ないか・・・
と思わずに、その子の体型・体重に合わせて適正量をしっかりと食べてもらえるような工夫が必要になります。
 

佐野先生コラム1

大切な家族だから、しっかり食べて長生きしてほしいです!

佐野先生コラム2

好みの変化も同様ですので、年齢や体重・体型に合わせたご飯の中で、本人に合うものを少しずつ、頻回に分けてあげるなどの工夫をするといいでしょう。

身体的な影響で、犬が食べない場合

佐野先生コラム1

「身体的な影響」についても教えて頂きたいです!

「身体的な影響」ですが、これもその内容により急に起きる場合や、徐々に徐々に気づけばそうだったかも?と気付く程度であったりと様々です。

加齢により、ご飯を食べない場合

「加齢」による食欲の減退というのは、思い込みの部分もあります。確かに我々人間も、10代前半の食欲は、歳をとるにつれてなくなっているかもしれませんが…
実際は、加齢だけが食欲低下の原因ではありませんよね?
ワンちゃんが食べなくなる原因も同じで、高齢・加齢だけを理由には
しない方がいいこともあります。
 
①適切な運動
②適切な環境
③きちんとした食事
があれば、大きく食欲が減ることはあまりありません。
 

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加齢だから、犬が食べなくなるという思い込みは捨てた方がいいですね。シニア犬でも、運動・環境・食事を整えておくことが大切だとわかりました!

お腹がすいていない場合

「お腹がすいていない」も同様で、高齢になり寝てばかりいるから、お腹が空かないというのはよくある状況です。
 
当たり前の普通の状況と捉えていいものではないことを、頭に入れておいてください。
 

佐野先生コラム1

シニア犬だから、寝たきりでご飯を食べなくなるというのは、良い状況ではないんですね。

佐野先生コラム2

  • 寝てばかりいる理由
  • 動かないからお腹が空かない理由

を考えてあげることが、非常に大切です。

これは「精神的な影響」とも重複する内容なので、複合的に判断・評価をすることが大切ですよ。

病気で犬が食べない場合

そして、最も心配になるのが「病気」が原因であることでしょう。
 

  • 食べるけど吐いてしまう
  • 食べる気持ちがある(フードに興味を示す)けど食べない
  • 食欲そのものがない(フードに興味を示さない)

など様々な状況が考えられます。
 

佐野先生コラム1

犬がご飯を食べないとき、どんな状態だったら動物病院を受診した方がいいですか?病院へ行く、判断基準が知りたいです。

佐野先生コラム2

  • 丸一日何にも食べない
  • 食べてないのに嘔吐や下痢をしてしまう
  • お腹が張って触ろうとすると嫌がる
  • しんどそう

という時は、「ただごとではない」状況です。
 
早急にかかりつけの先生のところへ連絡し、診察をしてもらうようにしてください。

佐野先生コラム1

「ただごとではない」状況のときには、動物病院へ直行ですね。病院へ行く判断基準がわかり、勉強になります!

いつも食べていたフードを食べなくなった場合

ワンちゃんの食欲というものの正確な評価は本当に難しいものです。それでも猫よりは分かりやすいのですが・・・
 
フードを食べなくなったときには、「フードが合わないせいかな?」と急激な変更を考えるのではなく、まず与えているフードの嗜好性を上げることから試してみてあげてください。
 

佐野先生コラム1

フードの嗜好性を上げるとは、どういうことですか?

お湯でふやかしたり、好きな香りのするものをトッピングしてあげてたりを試みることをお勧めします。
 

佐野先生コラム1

お湯でふやかすと、フードの香りが強くなるって以前教えてもらいました!犬の食欲が刺激されそうなので、やってみます。

佐野先生コラム2

それでも、一日以上、食欲の減退や廃絶が持続する場合には、どんな場合でもすぐにかかりつけの先生に連絡をするのがいいでしょう!!

我々・獣医師は、食欲の程度を飼い主様にお伺いするとき、「普段の食欲を100%としたら、今の食欲はどのくらい(%)ですか?」という聞き方をよくします。
 

佐野先生コラム1

%で表すと、どんなことがわかるんですか?

毎日見ているとわずかな変化に気付きにくいこともあるかもしれませんが、
変化の程度を意識する癖をつけていただけると、獣医師としては本当に助かります。
 

佐野先生コラム1

わかりました!普段の様子とくらべて、今の犬の食欲はどのくらい変化があるのか?しっかり観察して、獣医さんに伝えられるようにしますね。

犬が食べなくなった場合のまとめ

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犬がご飯を食べない理由は、いろいろある事がわかりました!単に、フードの好き嫌いだけではなさそう☆
 
普段から、愛犬の様子を観察して、変化を察知できるようにしたいと思います。
 
佐野先生、今日もありがとうございました。

佐野忠士先生

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授

小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています!