【獣医師コラム File:13】犬が震える原因は?動物病院に連れていく判断基準・すぐに飼い主がとるべき行動まとめ

今回もワンちゃんを心から愛する皆さんと一緒に、大切な「我が子」のためになることを一緒に考えてみたいと思います。
今回のテーマは「震え」です。
 

佐野先生コラム2

「犬 震える」というキーワードは、Googleでも月に1万件程検索されているようです。それほど飼い主である皆様にとっては興味があり、そして不安になる症状なのですね。

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そうなんです!犬が震えていても、言葉で説明してもらえないだけに原因がわからないことも多くて!
先生、お願いします!

犬が震える原因

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まずはいつものように、「震える」と言う行動について考えてみたいと思います。皆さん自身が「震える」時として、最も思いつくのはどんな時でしょうか?

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私は寒がりなので、冬とか冷房の効いた部屋に入ったときかな。

【獣医師コラム File:13】犬が震える原因は?

まさに「寒いとき」ですよね。暦ではもう夏ですが、6月の北海道ではまだ気温が一桁になる時も多く、「う〜〜寒い!(ブルブル)」と震えることがあります。
 
犬もこれと同じで、気温が下がった時など、体温が下がらないように「ブルブル」と震えて体温低下を防いでいます。これは正常の反応です。
 
また人は怖い時、不安な時にも「ブルブル」「ガタガタ」と震えますよね?これも犬も同じです。
 
あとは普段口にしていないものや、酸っぱいもの、熱いもの、冷たいものなんかを急に食べたり飲んだりしても震えますよね。これも人も犬も同じです。
 
あとは武者震い?でしょうか?興奮しすぎて震える。これも人と犬は同じです。
 

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え!? 犬でも興奮して震えるなんてことがあるんですか?

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ちょっと前、会いたさで震えがおきるほどの恋心を歌ったヒット曲があったような気がしますが、ワンちゃんも飼い主様と離れて寂しい時、会いたくて震えてしまうこともあります。

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先生、例がわかりやすすぎます。
うちの犬が私に会いたくてブルブルしちゃうなんて、私まで興奮で震えてしまいます~☆

ほとんどが、犬も人と同じような理由で「震える」のだと言うことを理解していただけると良いかなと思います。

どんな震えのとき動物病院へ行けばいい?犬が震えたら病気の可能性がある?

どんな震えのとき動物病院へ行けばいい?

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先生、それでも原因がすぐに思いつかないこともあって……。犬が震えているのを見ると、やっぱり心配になってしまいます。

そうですね。人間のお子さんを育てられた経験のある方、また子育ての情報に詳しい方などは特に不安に思うことが多いかもしれませんね。そのような方々は、小さな子供で見られる「ひきつけ」「熱性痙攣」「てんかん」などを連想し不安になっておられるのではないでしょうか。
 

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もちろんワンちゃんにも、同じ病気、もしくは似たような病気がありますから、不安になっても当然です。では、先ほどのような普通の震え(という表現も変ですが)と、病気の震えの違いについて説明しますね。

まず一番の違いは、意識があるかどうか?です。犬が震えているときに、

  • 飼い主様の呼びかけに反応する、反応できる。
  • 好きなものを見せたりしたら、そちらに興味を向ける。
  • 普段と同じように触らせてくれたり、撫でたり、抱っこしたりしてあげると落ち着く様子を見せる。
  • という場合は「普通の震え」であると思っていただき、震えている原因をゆっくり探し当て、きちんとその刺激を取り除いてあげれば大丈夫です。

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意識があるときの震えは、体の異常の可能性は低い、ということですね。

そうでない場合、例えば

  • 白目をむいて震えている(いわゆる”てんかん発作”のときに認められるような震えです)
  • じーっと一箇所を見つめて震えている
  • 飼い主様の呼びかけも聞こえていないようである
  • どこか触ろうとすると嫌がる、背中を丸めて震えている(立ったまま背中を丸めているイメージ)
  • 歯を食いしばって震えている

などのような時には、何か体で大きな変化が起きている可能性を示しています。
 
ワンちゃんが震えていたら、優しく呼びかけてあげ、優しく、ゆっくり体を撫でてあげてください。
それに反応するかどうか?嫌がらないかどうか??が見極めのポイントです。
 

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次の項目で、より詳しく説明しますね。

犬が震えたとき、飼い主ができること

犬が震えたとき、飼い主ができること

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犬が震えているときにしなければならないこと。まずは

  • 優しく声をかけてあげたり、名前を呼びかけてあげる
  • 優しく体を撫でてあげる

でしたね。

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小さな子であれば、好きなタオルなどで包んであげてもいいですね。
ただ、注意点があります!

人の「ひきつけ」の時には、唇や舌を噛んでしまわないようにタオルや割り箸をくわえさせるということを聞いたことがあるかもしれません。しかし、犬の場合、例えてんかん様発作の様なガタガタと大きく震え、舌を噛んでしまいそうな震えであったとしても、ワンちゃんの口元に手を持っていくのは大変危険です。
 
発作だった場合には「意識がない」ことが多く、飼い主さんの手を認識できず、
発作で手を噛んでしまう。それによって飼い主様が怪我をしてしまうということがあります。
 

佐野先生コラム2

まずは落ち着かせること。静かに穏やかに……を心がけてくださいね。

あとは、不安であった場合、すぐにスマートフォンなどのビデオで震えている様子を録画することをお勧めします。発生の時間や、持続時間、様子などをレポーターの様に記録することを意識して録画してもらえると、動物病院で見た時、「ああ、こんな感じだったのか……」と獣医の先生も理解がしやすくなります!
 

佐野先生コラム1

なるほど!言葉では説明しにくいことも、動画なら一目瞭然ですね。
意識がないような犬の震えに対しても、飼い主が冷静に対処することが大切なんですね!

犬の震えを予防することはできる?犬の震えに不安を抱えている飼い主さんにひとこと

佐野先生コラム1

原因は様々だということはわかったのですが、犬が震えてしまうのは、仕方ないのでしょうか。できればあまり震えないですむようにしてあげたい、と思うのですが。

暑さ、寒さが原因で震えることが多い子であれば、気温を整えてあげることが大切です。最近では家の中で皆さんと一緒に過ごされるワンちゃんが多くなってきていますので、皆さんの感覚よりも少し敏感に管理してあげると良いと思います。小さなお子さんや高齢者の方と一緒にいる感覚をイメージするとわかりやすいですね。
 
雷や車、飛行機などの大きな音にびっくりしたり、地震などの大きな揺れ、自分より大きな犬や知らない人が近づいてくるときなど、「恐怖」の感覚からくる震えの場合には、とにかく落ち着かせることです。
 

佐野先生コラム2

ただこの時、オヤツをあげるのは考えものです。

佐野先生コラム1

えっ?どうしてですか?

「怖いものがきて、吠えて震えたら、オヤツをもらえる」と変な流れを学習してしまっては、本末転倒ですよね。あくまでも、落ち着ける雰囲気・状況を作ってあげることが肝心なんです。
 

佐野先生コラム1

確かに!安心だとわからせてあげることが、何よりも大切なんですね。

佐野先生コラム2

嫌いなもの・震える原因になるものがわかったら、それをワンちゃんに近づけないように意識することが予防になります。地震や台風などは避けられるものではありませんが、直後に、すぐに落ち着かせられるような距離にいてあげてくださいね。

それでも、遺伝的に震えてしまう病気や、特別な検査をしないとなかなかわからない病気が原因で震えている、ということも完全には否定できません。
震えていて、お水も飲まない、おしっこも一日出ていない、という状況の時には、なにはともあれ、かかりつけの動物病院さんへ駆け込み、相談に乗ってもらうのが良いと思います。
 

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繰り返しになりますが、震えを見ると不安になって、飼い主様も震えてしまうということはよくありますが……そこは可愛い我が子のため、グッと震えそうになるのを堪えて、強い気持ちで「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と優しい声がけをしてあげてくださいね。

佐野先生コラム1

飼い主が不安がっていると、犬にもさらに不安を与えてしまいますものね。絶対守ってあげるという気持ちで接してあげたいと思います!

犬が震える場合のまとめ

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犬の震えには、慌てず冷静に、まずは原因を突き止めること!

  • 意識がしっかりある場合の震えには、まず犬が安心する状況を作り、原因となっている刺激を遠ざける。
  • 声をかけても聞こえていない、明らかに異常を見せている場合などは、まず優しくなでたり名前を呼んであげる。それでも反応を見せなかったり、嫌がるときは病気の可能性が高いので動物病院へ。
  • はっきりわからない場合、お水を飲まなかったりおしっこが出ないなどの身体の変化がある場合も、獣医さんに相談する。

私も、強くて安心と思ってもらえるようなママになるからね!
佐野先生、今回もありがとうございました!

佐野忠士先生

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授

小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています!