毎回、様々なテーマでワンちゃんのお体の悩みについてみなさんと考えさせていただいておりますこの企画。私も、毎回の記事を書くのがとても楽しみです!
いろいろとご質問やご意見をいただくことも多いのが大変励みになります。これからも沢山のご意見をお待ちしております!!
さて、今回のテーマは血尿です。
犬の血尿は病気のサイン?血尿と紛らわしい症状も!
おしっこに血が混じる、おしっこが赤い色になる、全てをまとめて「血尿」と考えがちですが、血便の時にもお話ししたのと同じように、その原因や組成などから
血尿と血色素尿(けっしきそにょう)などに分類されることを認識しておくといいかもしれません。
血尿は、尿の中に血液が混じっている状態ですよね。血色素尿というのは初めて聞きました。
血色素尿は、体内で何らかの原因により赤血球が大量に壊されて、赤い色素(ヘモグロビン)が尿の中に出てしまっていることを言います。ヘモグロビン尿とも呼ばれますね。
しかし、いずれにしても「普通の健康な状態」ではおしっこに血やヘモグロビンが混じることはありませんから、そのような場合にはすぐにかかりつけの病院で相談することが大切です!
犬の血尿の原因は?
血尿や血色素尿が出てくる原因には、以下のようなものが考えられます。
- 感染
- 炎症
- 損傷
- 結石・結晶
- 腫瘍
- 発情
- その他
血尿や血色素尿の原因には、こんなにいろいろな可能性があるのですね。私達のような飼い主でも、原因が見分けられるような特徴ってあるんですか?
それぞれが発生した部位が、おしっこの出口に近い部分であれば、いわゆる血尿と呼ばれる赤い色が強い尿になりますし、腎臓やその他の部分の異常の場合には、おしっこの色が濃い〜茶色っぽいというように、おしっこの色の変化でわかることも多いかと思います。
この、「その他の部分の異常」だと特に色が濃く出ますね。
では、血尿を示す原因と、その症状などについてひとつひとつ説明していきます!
感染
膀胱感染、尿路感染といった感染症によって血尿が認められることは、ワンちゃんでは非常に多く認められます。
後に説明する結石・結晶と一緒に認められることもよくあります。陰部を舐めることなどが原因で起こることも多いため、歯磨きなどでお口を常に清潔にしておくことは重要ですし、地面に近いところでおしっこをするメスのワンちゃんでは排尿の後に陰部を拭いてあげるなどして、陰部を清潔に保つことが重要です。
感染症を起こしてしまうと抗生物質の投与などでの管理が必要となりますし、非常に長引くことが多いため注意が必要です。
炎症
ネコちゃんに比べワンちゃんでは非常に稀ではあるのですが、非感染性の特発性膀胱炎という原因不明の膀胱炎が発生することがあります。
特発性すなわち原因不明のため根本的な治療法はなく、ステロイドをはじめとする免疫抑制剤などの投薬が必要になります。その他、感染からの炎症、腫瘍からの炎症などなど、元々の原因に引き続いて生じるものになるため治癒までに長い時間を必要とすることも少なくありません。
損傷
交通事故や高いところからの落下など、体に強い衝撃が加わった場合に腎臓、尿管(腎臓から出る膀胱まで尿を運ぶ管)、膀胱、尿道(膀胱から陰茎もしくは外尿道孔までの部分)が損傷を受けるなどによって血尿が生じます。
前述の通り、特にこの損傷部位がおしっこの出口に近い部分であれば、いわゆる血尿と呼ばれる赤い色が強い尿になりますし、腎臓やその他の部分の異常(特にこちら)の場合には、おしっこの色が濃い〜茶色っぽい色となるのが典型的症状です。
結石・結晶
こちらも比較的多い血尿の原因になります。食べ物が原因であることが多いのですが、はっきりと原因がわからないこともよくあります。
初期段階としてはおしっこがキラキラして見えたり、残尿感のためおしっこの姿勢を多くとるのにおしっこは出ていない、などの臨床症状を示すことが多いです。正確な診断のためには尿検査が必要になりますので、かかりつけの先生に定期的に相談してみてください。
人の場合、尿管結石は非常に強い痛みを伴いますが、ワンちゃんの場合、尿管結石があったとしても、明らかな疼痛行動(痛そうにする行動)を示さないことが多いです。発見が遅れてしまう原因のひとつですので、注意するに越したことはないわけです。
腫瘍
腫瘍は、泌尿器系のあちこちに比較的よく発生します。特にこれらは高齢になればなるほどその発生のリスクは高くなりますので、高齢のなりはじめ、つまり6歳のおわり頃から7歳以降は、こまめな定期チェックが必要です。
経験では、血尿という臨床症状をきっかけに、腹部の超音波検査などで発見され、大学へ紹介されて手術が行われるパターンが多い気がします。手術の後にも抗癌剤の投与などが必要となることも多いため、早期発見を心がけることが最も大切です。
発情
特にメスのワンちゃんで、発情出血(よく飼い主様がワンちゃんの「生理」と呼ぶあれです)により血が尿に混じる、もしくは陰部から発情出血しているのを、血尿と間違えることが多いです。
発情に伴う出血ですから、避妊手術をしているメスのワンちゃんでは認められないはずです。もし避妊ずみのメスのワンちゃんで生じた場合には別の原因を考えなければなりません。
稀ですが、去勢手術をされていないオスのワンちゃんで、発情などに伴う前立腺の分泌物に血が混じるということがあります。
オスでもメスでも「発情に伴う出血」の場合には、発情が治まってからの診察ということが必要になるかもしれませんね。
その他
免疫系の異常などで自分の赤血球が壊されてしまうような病気に罹患していると、血色素尿が認められてきます。また、避妊していないメスのワンちゃんの場合、子宮蓄膿症にかかってしまい、陰部から血が混じった膿が排泄されているのを「血尿」と思ってしまうこともあるかもしれません。
筋肉がひどいダメージを受けた場合(交通事故や高所からの落下、打撲、虐待など)にもミオグロビンという筋肉の成分が尿として排泄され、濃い茶色の尿が認められます。
長い間おしっこを我慢するような状況が続くと、残尿が生じやすくなり、それが炎症・感染の原因となって血尿へと続いてしまうことも多くありますので、ワンちゃんのおしっこのペース(トイレでできる、散歩でないとしないなど)をしっかり見極め、適切なタイミングでの排尿ができる環境づくりも大切です。
犬の血尿で病院に行くときのアドバイス!犬の血尿の予防法も
血尿や血色素尿を見つけたら、必ず動物病院に連れて行くようにしますね。
いつものように、血の混じった尿がわかるものを持っていけばいいでしょうか?
おしっこの成分は時間が経つと変性してしまうため、血のついたペットシーツや、血のついた尿を容器などに取って病院に持っていっても正確な診断が難しいことも少なくありません。
血尿などが認められた場合、すぐにその色がわかるように写メを撮っていただき、においを嗅いで、どんな感じか(濃いおしっこのにおい?膿のようなにおい?血なまぐさい??など)を記録しておくといいでしょう。
日常生活で、血尿などを予防する方法はありますか?
たくさんお水を飲んで、たくさんおしっこをすることは血尿を発生させないためにとても重要です!
そして、定期的な健康診断で発生の予防と早期発見を心がけるようにしていただけると嬉しいですね。
はい!愛犬の健康は飼い主が守ってあげなきゃ、ということをあらためて実感しました。先生、今回もありがとうございました!
佐野忠士先生 酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授 小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています! |