たくさんのコメントをいただきありがとうございます。
知識を得るということは、不安の解消につながりますが、またよりワンちゃんの様子がしっかりと見えて不安が大きく・強くなることもあるかもしれません。そんな時にはすぐにかかりつけの先生へご相談くださいね。
はい!このコラムが始まってから、獣医さんを今までよりずっと身近に感じるようになってきました。佐野先生、これからもたくさん教えて下さいね!
今回のテーマは何でしょうか?
今回のテーマは「目やに」です。
犬の目やにの原因は?気にしなくていい目やにと、異常が潜む目やにの見分け方は?
愛犬の目やには、飼い主のみなさんの悩みの種ですね。見た目もよくないし、頻繁だと目の健康も気になってしまいます。
そうですね。ではまず最初に「目やに」とは何者か?ということについて少し考えてみたいと思います。
目やにとは、専門用語では「眼脂(がんし)」といい、皮膚の垢のような、生理的な分泌物のことをいいます。
目とその周りのゴミをくるんで外に出す働きがあり、代謝により角膜・結膜から脱落した古い細胞などが含まれているものです。
つまり、いわゆる通常の生活・生命活動を行っている中で、普通に分泌される目の表面や周りの皮膚の垢のようなものと考えてください。
目やにに専門用語があったのには驚きです!皮膚の垢のようなものってことは、もとは身体の一部だったものなんですね。
我々も寝起きに目やにがついているよ とか言われることもあったり、無かったり……。目やにそのものは悪いものではなさそうです。
では、どんな状態の「目やに」が異常なものになるのでしょうか?
目やには、正常な代謝によって作られるものの他に、炎症反応(えんしょうはんのう)でも作られてきます。
炎症反応?
炎症反応というのは、細菌やウイルスなどの異物が体に入った場合や、怪我や手術などその部位が傷ついた後に起こるものです。
これも正常な生体反応なのですが、普通の代謝のような生体反応と比べて、すごく強く・激しく生じる反応のため、「反応の産物」として作られる目やにも、「多い量」「普段と違う性状」という特徴があります。
炎症に関わるものには体内の白血球(はっけっきゅう)が大きな役割を果たします。この白血球によって取り込まれたり分解されたりした異物が、体外に排出されたものが「炎症により生じる目やに」です。
この場合の目やにの中には、細菌やウイルスと闘った白血球などが含まれているため、量が多い、色が濃い、ネバネバしている、臭いがきつい、などといった性状の特徴が認められます。
犬の目やにで動物病院に行く基準
この
- 色が濃い:赤みが混じっている(目の白目の部分が赤みがかっている)、目や顔まわりが腫れぼったい、濃い黄色、緑色っぽいなど
- ネバつきが強い
- 臭いがキツイ
といった特徴があるときは、「生理的でない」≒異常な目やにのサインと思っていただき、動物病院への受診を強くお勧めします。
犬の目やにのお手入れ方法
目やにを取る時に、しっかりチェック、ですね。
それぞれの場合、お手入れの注意点はありますか?
目やには、これまで説明させていただいている通り、普通の量で普通の形状のものであれば生理的な代謝の反応ですから、通常は気にしなくてもいいでしょう(例えるならば、涎は、普段気にしませんよね?)。
とはいえ、目やにが涙の分泌腺などを塞いでしまうこともあるため、見つけた場合には柔らかいガーゼなどをぬるま湯に浸し(水でもOK)軽く拭いとってあげるだけで大丈夫です。
高齢のワンちゃんの場合、寝ていることが多かったりすると、瞬きの回数が少なくなるなど、目やにがたまりやすくなります。頻繁に拭ってあげることをお勧めします。
また、もし目やにの量がものすごく多い、粘つく、臭う などの「異常な目やに」の存在を疑ったり、心配になった場合には、目の表面に傷がついていたり、目の感染が起きている可能性が高いですから、ご自宅での管理を進めずに、動物病院へ相談してください。
その時、目やにを拭ってしまう前に、携帯などのカメラで写真をとることを忘れずに!
犬の目やにの予防法はある?犬の目やにや涙やけは食事も影響する??
目やにそのものは正常な身体のメカニズムだということはわかったのですが、それでも犬の場合、目の周りを触るのはけっこう大変で……。これって予防できるものなんでしょうか。
目やにの防止は少し難しいのですが、目やにと関連してよく相談されることの多い、「涙やけ」と関連づけて考えてみましょう。
涙やけは、涙とまざる脂肪分が少ないことで、涙の表面張力が減少して、涙液が角膜に拡がらずに涙がこぼれてしまうため生じる現象です。
涙の脂肪成分は上下のまぶたが接触(まばたき)して、離れたときに分泌されます。このため、涙の脂肪成分の分泌異常は、まぶたの炎症や、まばたきがうまくできないときに生じます。
つまり、目やにも涙やけも、目の炎症(いわゆる結膜炎とか、まぶたの部分の炎症など)に起因することがよくあるんです。
なので、治療として動物病院でお話するのは、
- まぶたの炎症に対しては消炎治療(抗生物質や消炎鎮痛薬の処方)
- まばたき不全に対しては、飼主さんに手でまばたきをさせてもらう
- 脂分の不足に対して、眼軟膏の微量点入による脂分の補充
です。
点眼薬や眼軟膏は、人用のものを安易に転用すると思わぬ合併症のようなものを引き起こす可能性がありますので、必ず、かかりつけの先生に相談してくださいね。
動物病院で涙やけの相談もできるのですね。
お薬以外に、目やにや涙やけのために日々できることはありますか?
はっきりとした原因・現象は解明されていないのですが、よく「食餌を変えたら涙やけや目やにが気にならなくなった」(もしくは気になりだした)という体験談を聞きます。
少し、食事との関連が気になる方は、ペットフードを変えてみるのも一つではないでしょうか??
そういえば、うちはナチュロルを食べていますが、涙やけはほとんど気にしたことがないかもしれません。
佐野獣医師から、目やにや涙やけで悩んでいる飼い主さんへのアドバイス
目やにや涙やけは、普通の目の代謝で認められる生体反応です。通常は気にせず、軽く柔らかい布やガーゼで拭ってあげて管理しておいてあげればいいですが、量・色・臭いが気になる時には、すぐにかかりつけの病院へ相談するようにしてください。
飼い主さんを見つめすぎて、瞬きが減ってしまうような、もう愛くるしい、キュンキュンのワンちゃんもいます。手のひらでまぶたを閉じてあげる、その時、ぬるま湯で温めたタオルなどで目元を覆ってあげると、より効果的かもしれません。
もちろん、飼い主様の「手の温もり」は一番の愛情をともなった治療です!
犬の目やにのまとめ
犬の目やにといっても、正常な目の浄化作用のこともあれば、病気や炎症のサインであることも。色やニオイ、量を観察して、異常があればすぐに対処したいです。
涙やけと食事の関連も気になるところ。愛犬の目の輝きをずーっと見ていたいから、これからもナチュロルを続けようと思います!
佐野忠士先生 酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授 小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています! |