【獣医師コラム File:14】犬の血便の原因は?動物病院に連れていったほうがいい?病気のサインや対処法を徹底解説
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みなさんはワンちゃんのウンチ、気にかけていますか?

「排泄」という行為は、栄養の消化・吸収がなされた結果のため、毎日当たり前のように、普通に行われるのが正常です。なので、突然、ウンチがゆるくなったり、色が違ったりするととてもびっくりしてしまい、不安になることと思います。
今回は、ウンチの異常の中でも飼い主様を驚かせることの多い「血便」について解説していきたいと思います。
 

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下痢や軟便と比べて、血便は「普通は起きない状況」を示すサイン。早めの動物病院への受診をお勧めする臨床症状です。

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「血便」と聞いただけでちょっとショッキングな印象ですが、もしもの時に慌てないためにも、原因や対処法を知っておきたいです!

犬の血便の原因と種類 血便で考えられる病気は?

【獣医師コラム File:14】犬の血便の原因は?動物病院に連れていったほうがいい?病気のサインや対処法を徹底解説

ウンチに血がついていたり、ウンチに血が混じっている状況のことを総じて「血便」もしくは「血様便」といいます。ウンチは、口から入った食べ物が消化・吸収された最終形態のものですので、血便は、この消化・吸収の過程の「どこか」で出血が起こっていることを示すサインです。
 
出血の原因は以下の様に様々なものがあります。
 

出血の原因として考えられるもの

  • 外傷による出血:口の中の怪我や、胃や腸に何か”刺さっている”ために出血している、手術の後や交通事故などで口、胃、腸に出血が起きている、肛門の怪我(人で言うところの切れ痔?)など
  • 炎症による出血:口内炎、腸炎など、炎症が激しく、血液が滲み出ている様な状態
  • 腫瘍による出血:腫瘍(多くの場合は悪性のがん)ができていて、その表面から、もしくは腫瘍が周りの組織を壊すことで出血している
  • 寄生虫の感染による出血:外傷と炎症の出血が合わさった様な状態ですが、目には見えない(見えることもある)小さな寄生虫が消化管に寄生していて、そのため出血をしている

 

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血便といっても、こんなにたくさんの原因があるのですね。見分け方はあるのでしょうか。

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血便・血様便の原因となる出血の場所によって、血の色や便の状態は大きく異なってきます。

①黒くなっている便、ノリの佃煮の様なタール状の便

黒くなっている便、ノリの佃煮の様なタール状の便の場合には、「上部消化管」、つまり口、食道、胃、小腸での出血が強く疑われます。特にタール状の場合には、小腸での栄養吸収が十分にできていないことを示す重大なサインになりますので要注意です!!
口や食道、胃に病変がある場合には、嘔吐やヨダレなどに血が混じっているのを見つけて気づくことも多いです。ヨダレや吐物に混ざる血は、真っ黒というよりは比較的赤みが強いものになりますので、これらと組み合わせて判断するといいかもしれません。
 

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便だけでなく、犬の身体が出すサインすべてに気をつけておかなきゃ。

②比較的赤みの強い便、便の表面に血がついている、血が混ざったゼリー状

これに対して、比較的赤みの強い便、便の表面に血がついている、血が混ざったゼリー状の粘膜が便についているようなケースは、ウンチの出口、すなわち肛門、直腸、大腸など「下部消化管」からの出血を示唆する臨床症状です。
うんちの表面に血がつく程度の場合には、肛門や直腸などの「出口」に近い部分の異常であることが多く、その場合にはウンチの形も比較的しっかりしていることも多いです。
 

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出血の場所がわかれば、原因も絞りやすくなりますね。

犬の血便が出たときの対処法
犬の血便で病院に連れていくときのポイント

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大きな怪我や事故でもない限り、突然の血便ということはあまり起きないものです。血便を見かけたら、それまでの食欲や、元気の有無の様子、そして体重の変化を振り返ってみてください。
 

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そしてやはり、日頃からの1ヶ月に1〜2回の体重測定はお勧めしたいです。ぜひ、飼い主様も一緒に!

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私の体重は見ないようにしてましたが……(笑)犬と一緒に健康管理するんだって思ったら、続ける気になりますね。

ところで、血便で動物病院へ連れて行くときの注意点はありますか?

 
血便を見かけたら、便と一緒にチャック付きの保存袋などに入れて保存し、できればすぐに受診していただくことをお勧めします。
また血便の頻度、その他の症状(よだれが多い、お腹を庇うように寝ている、背中を丸めてうずくまっている……)がないかどうかも観察してあげてください。
 

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排便の様子をスマホのビデオなどで録画しておくのもお勧めですよ。

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なるほど! 犬が血便をしていた時に痛そうだったとか、元気がなかったとか、身体の状態も伝わりますものね。獣医の先生に見ていただけるものは、なんでも残しておくようにします。

犬の血便で心配されている飼い主さんにひとこと

どんな震えのとき動物病院へ行けばいい?

下痢、軟便、血便など、いつもと違う便の状態はワンちゃんの体調変化を示す重要な臨床症状です。血便を見つけたら、なるべく早く、かかりつけの病院の先生へ連絡し、検査していただけるとありがたく思います。
 
余談になりますが、先日、大学のゼミで飼育していたワンちゃんが消化管にできた腫瘍による腸穿孔で腹膜炎・敗血症になり亡くなりました。
「ぐったりする」症状を示すまでは、比較的元気だったのですが、いつも「粘液状の血便をしていた」という話を聞きました。血便、特に粘液状の血便が続く状態は重大な病気が隠れているサインかもしれません。
早めの受診をお勧めしたいです。
 

犬の血便のまとめ

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犬の血便は、色や形状、血の混ざり方などによって様々な原因があることがわかりました。

愛犬の身体の中に大きな問題が隠れているかもしれないサイン。
見逃さないように、普段から観察を続けることが大切です。

佐野忠士先生

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授

小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています!