うちの犬、たまに吐いてしまうことがあるんです。吐いた後にケロッとしているので、病院には連れて行っていないのですが…でも、そのまま放置してよいのか、不安になることがあるんです。今日は、ワンちゃんの嘔吐について教えてください。
大切なワンちゃんが吐いてしまうと心配になりますよね。わかりました!今日は「犬の嘔吐」についてお話しましょう。
よろしくお願いします!
まずは「犬の嘔吐とは何か」について説明しますね。
犬の嘔吐とは?
食べたものを「戻して」しまう嘔吐(おうと)。
我々も経験があるだけに、その辛さや、気持ち悪さが想像できて愛犬の嘔吐する姿を見ると心配になっちゃいますよね。
そうなんです。目の前で、犬が吐いていると居ても立ってもいられなくて…
そうですよね。ワンちゃんの嘔吐も人の嘔吐も基本的には同じ理由で同じような症状として認められます。
それでも、人間と犬でちょっと異なる点もあります。さらに、気をつけてあげるポイントなどについて今回はお話しします。
いつものことですが、嘔吐の定義って、何だかご存知ですか?
嘔吐の定義…わからないです!
私、大学で教員をやっているせいか、こういった言葉の定義、説明するの好きなんです(笑)しばし、お付き合いくださいね。
- 嘔吐反射によって胃の内容物を排出する現象
- 本来は生理的な反射
- 誤って摂取した有害物質を体外に排出するための機能
と定義されます。
へぇ…反射的な現象であったり、排出するための身体の機能なんですね。
そうです。古いものや、体にとって毒であったもの、体調を崩すようなものを摂取してしまった時、それを体から吐き出す「反射」が嘔吐なんです。
でもね、ご安心ください。胃や腸が「びっくり」しただけで吐いてしまうことも多いんですよ!たとえば、美味しくて嬉しいものを食べたときなどにも吐いてしまうこともあるのです。犬は吐きやすい性質を持っているだけなんですよ。
だって、皆さんも、別に悪いもの(賞味期限の切れたもの、腐ったものなど)を食べた時にだけ嘔吐するってわけじゃないですよね?
そうですね。体調が悪いときとか…あ、私は、船酔いや車酔いでも吐いてしまうことがあります!
体調が悪かったり、お酒を飲み過ぎたり、乗り物酔いしたり・・・・変なものを食べた時にだけ嘔吐するのではないというのはワンちゃんも、人も同じです。
どういうことですか?
また少し難しい話になりますが、延髄(えんずい;背骨の中を走る神経の首のところ)に嘔吐中枢(おうとちゅうすう)という部分があり、ここで色々な刺激(めまい、変なものを食べた刺激、変なものの体の中の濃度が上昇したなど・・・)を感知して「吐き出せ」という指令を出して嘔吐させているのです。
一般的には胃に入って消化された、消化されかかったものや、完全に栄養として吸収されてから吐き出されるのが特徴です。
犬は栄養として吸収されてから、吐き出すんですか?
そうです。この他に、吐出(としゅつ)という異常もあり、これは食べてすぐに、未消化なものが吐き出される反応です。
若いワンちゃんで離乳食から普通のフードに変えたあたりから「吐出」が認められるような場合には、要注意です。先天性の異常が疑われますので、すぐに動物病院での診察をお勧めします。
わかりました。子犬の場合には、吐出に要注意ですね。
犬が吐く原因
ワンちゃんが吐く原因は、人と比べても様々です。
例えば、急に新しいご飯にした時、胃が腸が「びっくり」してしまい、吐いてしまうということは非常に多く聞く事例です。
フードが悪いからではなく、新しいご飯にする際には、前のものと少しずつ混ぜながら、この胃がびっくりする状態を作らないようにしてあげるといいかもしれません。
犬の場合、胃がびっくりして吐いてしまうことがあるんですね。新しいごはんをあげるときには、気を付けます!
また、体調が優れなかったり胃がムカムカするような感じがあると、草とかを食べてそれから吐くというようなこともよく認められます。
長い時間の絶食などで空腹時間が長くなり、胃液が濃くなるとそれで吐くということもあります。ワンちゃん、猫ちゃんは、人と比べると吐きやすい動物 という認識を持っておくことも大切です。
あ、うちの犬も朝ごはんのタイミングが遅いと、胃液を吐いてしまうことがあります。だから休みの日でも、朝寝坊をせずにごはんをあげるように注意してるんです!
ちなみに、余談ですが、牛さんのような「反芻獣(はんすうじゅう)」という動物はいつも口をもぐもぐしているように、胃の中のものを口に吐き戻してはもぐもぐ、ごっくん、吐き戻してはもぐもぐ、ごっくんを年がら年中繰り返している生き物です。
逆に、おウマさんやうさぎさんは吐くことのできない生き物です。あ!蛇も吐くことはできない生き物です(笑)。
動物によっても色々な特徴があるんですね。犬は、人と比べると吐きやすいという認識を持つことが大切だとわかりました。
嘔吐で動物病院に連れていく基準
佐野先生、犬は人より吐きやすいことはわかったんですが…繰り返し吐いてしまう場合は、獣医さんに診てもらった方がよいのでしょうか?
1日に何回も嘔吐が認められる場合、それが数日間続くような場合には動物病院へ連れて行くことをお勧めします。
また、吐こうとしているのに吐けない様子が認められる(俗にいう「えずく」)ような症状を繰り返す時にも、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてください。
水を飲んでも吐いてしまう ような場合にもすぐに動物病院へ連れて行ってあげることをお勧めします。
わかりました!
動物病院に連れていく判断順は、3つですね。
- 1日に何度も嘔吐しているとき
- 吐こうとしているのに吐けないとき
- 水を飲んでも嘔吐してしまうとき
それから、もし「変なものを食べてしまった」という現場を目撃していたり、「変なものを食べてしまったかもしれない」ということが心配される場合には、出来るだけ早く動物病院へ連れて行ってあげてください。
誤食をしてしまった時ですね…!考えただけで恐ろしいですが、万が一誤食をした際には、すぐに動物病院に連れていきます。
日本ではチョコレートの誤食は、クリスマスの時期とバレンタインの時期にもっとも多いとされていますし、焼き鳥の串、チキンの骨、食べ物を包んでいた銀紙などの誤食は、年末年始も含めて非常に多く発生しています。
串や骨…⁉⁉わかりました。誤食をさせないことが1番ですが、万が一の場合は、すぐに獣医さんに診てもらいます。
食べ物と犬の嘔吐の関係
先ほどもお伝えしましたが、嘔吐の定義 としては「誤って摂取した有害物質を体外に排出するための機能」という体にとって悪いものを外に吐き出す反射です。
しかし、実際には、色々な理由でワンちゃんは嘔吐をすることがご理解いただけていると思います。
- フードの種類が新しくなったとき
- とっても美味しいフードを一気に食べてしまったとき
- 空腹時間が長かった時に、一気にたくさんの量を食べてしまったとき
- 1日に何度も嘔吐しているとき
- 吐こうとしているのに吐けないとき
- 水を飲んでも嘔吐してしまうとき
- 誤食をしたとき
- 前のフードと少しずつ混ぜながら慣らしていく
- 嘔吐の頻度、嘔吐物の性状をよく観察
- 水を飲ませたり、ふやかしたりして消化管を休ませる
- 嘔吐の原因となるような「異常物」の摂取をさせない
- 吐いた後は、ゆっくりと何もなかったように片付ける
などです。
はい。「犬の嘔吐」といっても、様々な種類があることを今回初めて知りました。
ですので、普段のフードや、フードを新しくして吐いてしまった場合には、「フードが合わなかったのかな?」と決めつけずに対処していくことも大切です。
例えば、どんなことをしたら良いのでしょうか?
まず、フードの種類が新しくなったときは、前のフードと少しずつ混ぜながら慣らしていくことがポイントです。
1週間くらいかけながら、徐々に徐々に新しいフードの量を多くして、1週間後には完全に新しいフードだけにすると良いですよ。
次に、とっても美味しいフードを一気に食べてしまわない工夫や、空腹時間が長かった時に、一気にたくさんの量を食ないようにする工夫についてです。
ゆっくりよく噛んで食べてもらうような工夫をすることが大切です。早食い防止の食器を使う、手から少しずつあげるなどがおすすめです。
飼い主のひと工夫で、犬が吐いてしまうことを防げるかもしれないんですね。大切なことを教えてくださり、ありがとうございます!
嘔吐した時の対処法
佐野先生、犬が嘔吐してしまった時はどのように対処したら良いのでしょか?
まずは嘔吐の頻度、嘔吐物の性状をよく観察してあげてください。
吐いたものを食べようとするということも良くあることです。全く消化されていないものが良く吐き出されるようであれば、ワンちゃんがフードを丸呑みするくせ?がついている可能性があります。
食べ方にも癖があるなんて。もし丸のみしていた場合は、どうしたら噛んで食べるようになるのでしょうか?
ゆっくりと良く噛んで食べれるような工夫として、少しお湯でふやかしてみる、少しずつ落ち着かせながらあげてみる、複数で飼われている場合には、それぞれが「落ち着いて」食べられる環境を作ってあげる などを意識してあげてください。
お湯でごはんをふやかす方法は、簡単にできそうです。
嘔吐した場合は、理由は何であれ、消化管が少し「荒れている」可能性があります。まずは落ち着いてお水だけを飲ませてみる。お湯でふやかしたフードをあげてみる、缶詰タイプのフードを少しだけあげてみる などでお腹を休めてあげることも大切です。
わかりました。水を飲ませたり、ふやかしたりしながら、ワンちゃんの消化管を休ませてあげますね。
普段の生活で注意すること
犬が吐くことについて、色々教えてもらいましたが、普段の生活で注意するべきことも聞きたいです!
まずは、繰り返しになりますが、嘔吐の原因となるような「異常物」の摂取をしないように普段から心がけてください。
お菓子や、調味料、薬、などなど、ワンちゃんの口に入りそうなものの管理は厳重に!
また食事もワンちゃんとのコミュニケーションと考えていただき、「あげたら一気ぐい!」のような状況を避けるような雰囲気、環境を作ってあげることも大切です
しっかりと良く噛んで、食べる姿を褒めてあげることで、ワンちゃんもゆっくり安心して落ち着いて食べるようになると思います。
誤食の原因を飼い主が作らない。またごはんを食べる環境を整えることが必須ですね。
あ、あとは、吐いてしまった時、人もそうだと思うのですが、飼い主さんが驚いて
「わぁ〜!どうしよう!!! 大丈夫???大丈夫???」と慌ててしまうことはしないようにしましょう。その態度や言葉にワンちゃんが不安を感じてしまい、精神的にまた気持ち悪くなってしまうこともあります。
あっ…私もやってしまってたかも…落ち着いた行動を心がけます。
そうですね。吐いたものも、ゆっくりと何もなかったように片付けましょう。
食べようとしているのを無理やり大急ぎで片付けようとすると、飼い主様との「取り合い」のゲームのような感覚になってしまい、構って欲しくて吐く なんてことが起こるようになってしまうかもしれません。
犬にも感情がありますもんね。ゆっくりと何もなかったように片付ける…肝に銘じます!
まとめ
嘔吐で動物病院に連れていく基準
新しいフードにして吐いてしまった際の対処法
嘔吐した時の対処法
普段の生活で注意すること
今日も大切なことをしっかり学べてよかった!大切な犬が、長生きで楽しく健康でいられるように、これからも色々勉強したいなぁ。
佐野忠士先生 酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授 小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています! |
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