【獣医師コラム File:19】犬もつらいアレルギー 症状・原因・治療について獣医師が徹底解説!
今回はワンちゃんの「アレルギー」についてお話をしてみたいと思います。非常に身近な症状として一般の人にも認識が深い「アレルギー」。ワンちゃんの場合にはどのような特徴が認められるのでしょうか??
 
佐野先生コラム2

今回も、皆さんの疑問にお答えしたいと思います!! 

 
佐野先生コラム1

愛犬がアレルギーで痒そうにしているのを見ると本当にかわいそうで、なんとかしてあげたいと思っている飼い主さんは多いと思います! 
佐野先生、よろしくお願いいたします☆

 
 

犬のアレルギー 人とは違う?

 

佐野先生コラム1

アレルギーっていう言葉はなんの気無しに使ってしまっていますが、そもそもどういうものなんですか? 

 
ある特定の異物(ダニやスギ花粉、食物など)に対して免疫が過剰に反応して、体に症状が引き起こされることを「アレルギー反応」といいます。この反応は人でも、人以外の動物でも同じように生じる反応です。
 
佐野先生コラム2

ですので、ワンちゃんのアレルギーといっても何か特別なものではなく、人のアレルギーと同じだと認識していただければ大丈夫です!!

 
本来であれば反応をしない「特定の物質」がアレルギーを引き起こすわけですが、その物質はそれぞれのワンちゃんによって異なり、摂取もしくは接触などした時に様々な症状が認められてきます。
 

犬のアレルギーの種類や症状は?犬が出すサインを見逃さないようにしよう

 
犬のアレルギーの種類や症状は?犬が出すサインを見逃さないようにしよう
アレルギー反応には大きく4つのパターン(Ⅰ~Ⅳ型)があり、その代表的な病気と反応出現までの時間は次のようになります。
 

Ⅰ型アレルギー性鼻炎、気管支ぜん息、じんましん・アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アナフィラキシー即時型
Ⅱ型自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、顆粒球減少症、新生児溶血性黄疸
Ⅲ型血清病、過敏性肺炎、ループス腎炎(慢性糸球体腎炎)、全身性エリテマトーデス遅発型
Ⅳ型接触皮膚炎、結核の空洞形成、橋本病、ベーチェット病、臓器移植後の拒絶反応や移植片対宿主病(GVHD)、ツベルクリン反応遅延型

 

佐野先生コラム1

よく聞く症状から、人では指定難病とされている病気まで!これみんなアレルギーの種類なんですね。

 
佐野先生コラム2

そうなんです。一般的に食物アレルギーや花粉症などはⅠ型アレルギーに分類され、皆さんはおそらくこの症状をイメージして「アレルギー」を想像されていることと思います。今回は主にⅠ型についてお話しますね。

 
Ⅰ型アレルギーは、アレルギーを引き起こすそれぞれの成分(アレルゲンといいます)が摂食や吸引などで体内に入り、その後、比較的短時間(直後から2時間以内)に症状があらわれるため「即時型アレルギー」ともいわれます。
これには体で作られる免疫物質である「IgE抗体」が関与しており、正常のワンちゃんでは摂取した物質に対して反応をしないのですが、アレルギーのワンちゃんの場合、摂取した物質がアレルゲンとなり様々な臨床症状が認められることになります。
 
佐野先生コラム1

その症状や原因は、どのようなものがあるんですか?

 
皮膚の赤み、掻痒感(そうようかん、痒がる感じ)、目や目の周囲の腫れ、皮膚のぶつぶつ、下痢、嘔吐など、原因の物質とアレルギーの種類によって認められる症状は様々です。
 
佐野先生コラム1

アレルギーで下痢や嘔吐が起こることもあるのですね。

 
アレルギーの原因も、ノミやダニ、疥癬などの寄生虫、食べ物、花粉やハウスダストなど様々なものがあります。原因物質がはっきりせず、もしくは特定の物質に限らずに複合的な要因が合わさった結果として皮膚に反応を示すものが「アトピー」と呼ばれるアレルギーの種類になります。
 
佐野先生コラム2

何かを食べたり、何かに触れた後に前述したような症状が認められた場合にはアレルギーを疑い、少し注意を始めるのがいいと思います。あまりにも激しい症状が認められる場合には、すぐにかかりつけの先生に来院について相談してください。

 

アレルギーになりやすい犬種はあるの?

 

佐野先生コラム1

犬種によって、アレルギーになりやすいなどの差はあるんでしょうか?

 
日本犬の中では、柴犬で多く発生すると言われています。その他、シー・ズー、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、パグ、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、シャーペイなども、アレルギーがよく見られると言われています。
 
犬種によって、アレルギーになりやすいなどの差はあるんでしょうか?
 
佐野先生コラム1

短頭種や、皮膚にしわが多いワンちゃんは、特にアレルギーに気をつけてあげたほうがよさそうですね。

 
佐野先生コラム2

もちろんこれ以外の犬種では「認められない」ということではありません。皮膚が脂っぽい子や、ノミやダニによく噛まれる環境にいる子、埃の多い場所にいる子などは、常にアレルゲンにさらされていることになり、アレルギー症状が発症しやすくなってしまうかもしれませんので注意が必要です。

 

愛犬がアレルギーかも、と思ったら?病院に連れて行く基準と治療法・対策は?

 

佐野先生コラム1

「もしかしてうちの子、アレルギーかな?」と感じたら、どうしたらいいでしょうか?

 
まず、下痢や嘔吐が認められる、もしくは続く場合には、アレルギーかどうかの判定とは関係なく、かかりつけの先生へ相談してください。
前述したアレルギー症状、つまり、皮膚の赤み、掻痒感(痒がる感じ)、目や目の周りの腫れ、皮膚のぶつぶつなどが酷く、ワンちゃんがとても気にしてしょっちゅう掻いている、体を床に擦りつけているなどの症状が認められる場合にも、診察を受けていただくことをオススメします。
 
佐野先生コラム1

やっぱりなんでも獣医さんに相談、ですね。アレルギーだった場合、どんな治療を行うんですか?

 
治療法は、アレルギーの原因によって異なってきます。
 
ノミやダニ、寄生虫の感染が認められる場合には、寄生虫の駆除などの治療が最も重要となります。併せて炎症を起こしている皮膚のケアも行います。
皮膚が脂っぽくて痒みが強い子などは、皮膚の細菌感染も同時に発症している場合は多いので、薬用シャンプーと抗生物質の投与などを行うことが一般的です。
 
佐野先生コラム2

市販のシャンプーは刺激が強いので、必ず病院でのシャンプー(薬浴といいます)をすることを忘れないでください!

 
食べ物アレルギーの場合、アレルゲンとなっている食べ物を限定・特定しなければなりません。
除去食試験という形で、考えられる成分を特定しながらアレルギーの原因を与えないようにしていきます。この場合には、特別な処方食の給与が必要になりますので、こちらもかかりつけの先生のところで処方してもらうようにしてください。
 
佐野先生コラム1

アレルギーになる原因を取り除いてあげることが、一番の対策になるんですね。

 
特定の原因を特定しづらく、また簡単にアレルゲンを排除すればいいというわけにいかないのがアトピー性皮膚炎です。アトピーについては「完全に治す」というのは難しいかもしれませんので、アレルギー反応を起こしづらい食事、環境の整備(寝床などを清潔にするなど)、身体を常にきれいにしておく(薬用シャンプーの使用)などを実践しながら、痒みが強い時だけ痒み止めのお薬を投与するなどして、ワンちゃんにとっても、飼い主様にとっても「辛くない」状態での管理を目指していきます。
 
佐野先生コラム1

なるほど!かゆみのストレスが更にアトピーを悪化させてしまうこともある、と聞いたことがあります。お薬の力も借りつつ、アレルギーの起きにくい環境をキープしてあげることが大切なんですね。

 

愛犬のアレルギーで心配をしている飼い主さんへ一言

 
愛犬のアレルギーで心配をしている飼い主さんへ一言
「アレルギー」というと、治りが悪く長い間辛い思いをする病気 というイメージがあるかも知れません。体質が原因の病気であるため、その子がアレルギーの症状を発症するかどうかは誰も予測することは不可能で、完全な予防は難しい病気かも知れません。心配になることも多いと思いますが、今では良い食事、良い薬、良いシャンプーがありますので、その子にあったものをかかりつけの先生と一緒に見つけてあげてください。
 

佐野先生コラム2

ワンちゃんと飼い主様のどちらもが「辛くならない」治療法を見つけてもらえればと思います!

 
佐野先生コラム1

犬のアレルギーでも、原因をみきわめてきっちり対処することで、いやーなかゆみを抑えていくことも可能なんですね!佐野先生、今回もありがとうございました!

佐野忠士先生

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授

小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています!