いつも愛犬の「気になる」をテーマとしたお話をいろいろさせていただいておりますが、これで皆さんの不安を少しでも解消・軽減することができていれば幸いです。そんな中で今回のテーマは「爪切り」です。
ご自宅でうまくできない、一度やろうとしたら出血してしまった、そもそも爪切り必要なの??といろんな不安・疑問が湧いてくるのではないでしょうか??
そうなんです!爪切りしなきゃと思いつつ、犬が嫌がるのでかわいそう、とつい先延ばしにしてしまいます。
「犬の爪切り」、今回のテーマもとっても楽しみです☆
犬の爪切りの重要性
その昔、ワンちゃんが外で飼われるのが普通だった時代、そしてそもそももっと前のワンちゃんの祖先(オオカミ?と考えられている)は、爪切りなどは必要ありませんでした。
それはどうしてか、ちょっと考えてみてください。わかりますよね??
えっと、昔の犬やオオカミは、基本的に外で暮らしていましたね。
ええ。硬い地面のところで生活しており、自分の寝床などを作るために穴を掘り、獲物を捕まえて逃さないために、適度な長さの爪と、適度に削れる環境が整っていたからです。
そういえば、昔実家の庭で飼っていた犬には一度も爪切りしたことなかったです。
ワンちゃんがお家で飼われるようになり、獲物を獲る必要もなくなってくると、爪が「適度な長さで」維持されるのが非常に困難となります。その結果、現代社会での生活における「適度な」爪の状態を、爪切りにより維持する必要が出てきました。
なるほど~。人と同じような環境で暮らすようになったのだから、ちゃんと人がケアしてあげないといけないんですね。
じゃあ、もし爪切りをしなかったら、どんな問題が出てきますか?
爪が長いと、タオルやカーペットのようなものに引っかかってしまい思わぬ怪我の原因となってしまいます。
例えば、引っかかったことにパニックになり、無理に動かして取ろうとするために、指の脱臼や骨折などが生じる危険性もあります。
また、フローリングなどでは爪と床との接点が小さくなってしまい、滑りやすくなることで、これも怪我の原因となってしまいます。
もっとひどくなると、魔女の爪のように大きく巻いて伸びてしまい、足がうまく使えない、巻いた爪がワンちゃん自身に刺さってしまうといった様々な障害が生じてしまうため、ワンちゃんの爪切りは定期的に実践していただくことが何より重要なのです。
犬を爪切りに慣れさせるには?どうしても爪切りを嫌がる犬の場合はどうしたらいい?
犬に怪我させないために、爪切りはとっても大切だということがよくわかりました!でも、うちの犬は爪切りが苦手で、すぐに手を引っ込めてしまうんです。無理強いするのもかわいそうで…
歯磨きのコラムでも説明しましたが、本当は爪切りをそれだけ嫌がる何かしらの理由がそこに存在する(であろう)という視点で動物を診ていただくことが重要です。
例えば昔、無理やり押さえつけられて痛い思いをした、だから指先(肢先)を触られるのが嫌い、といったような流れです。
いずれにしても今現在、爪を切られることを嫌がってしまっているので、その状態で爪切りをするとなると嫌悪記憶の上塗りになってしまい、爪切り=嫌なこと=暴れる、という構図・流れがさらに強化されてしまいます。
このような状態の子に対しては、下のようなステップを追って、徐々に徐々に「爪切り」という行為ができるように流れを作ってあげましょう。
〈爪切りに慣れさせるステップ〉
1.まずは足先を触られることに慣れる
2.爪切りが足先に触れることに慣れる
3.少しだけ爪を切ってみる
これは、例えば耳掃除を嫌がるとか歯ブラシを嫌がるなど、全ての行為に慣れてもらう流れのステップとして覚えておくといいでしょう。
- ステップ1…爪切りの場合、まずはお手やその他の流れから肢端(足先)を握る、触るをし、指先に触られること、指を握られることなどに慣れてもらいます。
- ステップ2…次に、爪切りを指先に当てて、爪切りが怪しいのものではない、嫌なものではないことを覚えてもらいます。
1~2を3日くらい連続で行って、徐々に徐々に「足先を触られて、足先に変なものが当たる」という感覚に慣れていってもらうことが最初のステップです。 - ステップ3…次に、少しだけ爪切りで爪を切って、爪が切られる感覚に違和感を感じなくなってもらいます。この過程の中で、「ワンちゃんが嫌がる感じ」が認められた場合には無理をせず中断しましょう。
ほんの小さいステップから積み上げていくんですね。これならできそうな気がしてきました!
各ステップがうまくできた場合には、その場で大袈裟にでも褒めてあげて、爪切りをちゃんとできたらご褒美がもらえるということを覚えてもらえたら、あとは非常に管理が楽になります。
場合によってはオヤツなどを与えてもO.K.ですよ。
動物病院で犬の爪切りをするメリット
ご自宅などで爪を切ることができればわざわざトリミングサロンや動物病院で爪切りをしてもらう必要はないかもしれません。
しかし、ご存知の通り、爪が真っ黒で血管の走行などが確認しづらいワンちゃんも多く存在します。
そんなワンちゃんだと、ご自宅では「どこまで切ったらいいんだろう」と不安になって、いつもより浅めの爪切りになってしまいます。
血管まで切ってしまったらどうしよう、って爪切りに慎重になってしまう気持ち、わかります!
そんな子でも確実に爪切りができ、万が一爪の中の血管を切ってしまったときの止血のものが揃っている動物病院での爪切りはお勧めです。
かかりつけ医であれば、その他の異常状態(例:耳の中の掃除、お口のケアなど)についても診てもらうなど、爪切りをきっかけとした全身的なケアへとつなげていくことを意識するのも重要なポイントになります。
犬の爪切りの頻度って?タイミングの見極め方
犬の爪切りのタイミングが難しいのですが、どれくらいの頻度でやったらいい、という目安はあるんですか?
それぞれのワンちゃんで爪の伸びる速さに違いもありますし、1日の散歩の時間や距離などによっても爪が「余分に伸びるまで」の期間が大きく異なるため、一概に「爪切りは何日ごとに」とも言い切れないのが現状です。
フローリングなどを歩く際、爪が床に触れて立つ「かちゃかちゃ」という音がよく聞こえるようになったら切ってあげた方が良いというのが大雑把な感覚ですね。
やっぱりなんでも観察して、愛犬の状態を把握することが大事なんですね。
犬の爪切りの注意点!ワンちゃんとの関係がキーポイント
犬の爪切りで、他になにか注意しておくことはありますか?
歯磨きの時にもご説明いたしましたが、「爪切りをしよう!!」と飼い主様が意気込み過ぎて、ワンちゃんがものすごく嫌がっていたりすると、どんどんどんどん関係が悪化し、爪切りを手にしただけでワンちゃんがどこかに逃げようとする、逃げてしまうということが繰り返されてしまいます。
爪切りも、歯磨きも耳掃除も、「ワンちゃんとのコミュニケーション」と考え、楽しい雰囲気でゆったりと臨んでください。
とはいえ、定期的に適切な長さにしておかないと、爪の中の血管も伸びてしまい、爪切りの時に毎回出血をしてしまう、ということになりかねないので、常に適切な長さに整えておくように心がけるといいと思います。
犬の爪切りまとめ
昔はあまり意識しなかった犬の爪も、屋内で生活するワンちゃんが増えた今、爪切りはヘルスケアの一環。
犬の爪が伸びすぎると、骨折や脱臼などの大怪我にもつながるそうです!
爪切りを嫌がるワンちゃんには、徐々に徐々に慣れさせていくことで、お家でもできるようになるんですって!それでも難しい場合は獣医さんで切ってもらうこともできるので、気軽に相談したいですね。
うちでももう一度、爪切りに慣れてもらうステップから始めたいと思います。
佐野先生、今回もありがとうございました!
佐野忠士先生 酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授 小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています! |