ワンちゃんにも同じ様なことがあったかもしれません。
今回は「犬の咳」についてみなさまと正しく理解を深めていきたいと思います。
犬が咳をしても、原因がわかりづらくて。病気とそうでない場合の見分け方や予防法などが知りたいです!今日もよろしくおねがいします!
犬が咳をする原因は様々!
そもそも「咳」とは専門用語としては咳嗽(がいそう)といい、臨床症状を示す言葉になります。
肺や気道から空気を強制的に排きださせるための生体防御運動で、繰り返し生じる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動のことを言います。
ちょっと難しい表現になってしまいましたが、要は異物などを吐き出したり、何か刺激物の存在を感じて「反射的に」生じるのが「咳」ということです。
反射なので、なんとかして止めよう としても止めることが難しいのは、皆さんも経験されておられますよね……
はい!むせちゃったときとか大変です……
で、犬が咳をするのってどういうときなんですか?
皆さんが「咳」をする時の状況を思い浮かべてもらうと、その原因や状況が多岐に渡ることが理解できると思います。
犬の咳の原因(1)乾燥による咳
一番理解しやすいのは「乾燥による咳」ですね。
これは乾燥により気管の粘膜とその表面にある細かい毛のようなものがうまく動かなくなり、息を吸ったり吐いたりする空気の流れが刺激になって咳が出てしまう、というものです。
犬も乾燥で咳をするんですね。じゃあ暖房なんかもよくないんでしょうか。
ワンちゃんは十分に湿った鼻、沢山の唾液の出る口がありますので、普段はお部屋が乾燥しているから咳が出やすい、とはあまりなりませんが、高齢のワンちゃんや、気道に問題のあるワンちゃん(後述)などでは、お部屋の乾燥が咳を引き起こす原因となりますので、加湿器などによる十分な加湿を心がけてあげてください。
次に咳の原因となるのは、咳を引き起こす病気に罹っている場合です。
犬の咳の原因(2)ケンネルコフ
一般的な言葉として飼い主様もご存じの「ケンネルコフ」は、犬や犬舎を意味する「ケンネル」(kennel )と咳を意味する「コフ」(cough)が組み合わさった言葉です。
飛沫感染(ひまつかんせん)などにより感染・伝染する病気です。
ワクチン接種で防ぐことができますが、子犬で咳をしている場合には、すぐにかかりつけの動物病院の先生に相談するのがいいでしょう。
ちなみに、今、まだ世間で話題の「コロナウィルス」は犬でもその病名の感染症はありますが、咳の症状は示しませんし、人へ感染ることもありませんので、ご安心ください。
犬の咳の原因(3)気管虚脱・肺炎
そのほか、気道・気管の形が変形したり、別の病気が気道・気管を圧迫することで咳が生じていることも多く認められます。
気管虚脱(きかんきょだつ)などはその代表例です。
パグやフレンチブルドッグ、ボストンテリアを代表とする短頭種犬や、ポメラニアン、トイプードルなどの小型犬は気管虚脱を生じやすい犬種と言われています。
咳と併せて呼吸する際に「ガーガーという呼吸音がする」のは気管虚脱の特徴的な症状の一つです。
うちもトイプードルなので、気管虚脱に気をつけてと言われていました。咳と「ガーガー」という音が出たら要注意、ですね。
肺炎でも咳は生じますが、肺炎の原因となる状況が必ずあるはずです。
食欲がない、嘔吐する、など全身症状が見られたあとの咳の場合には、吐いたものを誤嚥してしまって生じる「誤嚥性肺炎」(ごえんせいはいえん)などが起こっていることがありますので、こちらもすぐにかかりつけの動物病院の先生に相談するのがいいでしょう。
犬の咳の原因(4)心臓病による咳
心臓病の犬で咳をしているのは、心臓病の悪化・進行がひどい場合の特徴的症状です。もし、皆様のワンちゃんが、心臓病の治療をしている場合、咳の聴取は非常に重大なサインですので、すぐにかかりつけの動物病院の先生に連絡してください。
咳をする前に、呼吸が速く浅くなる、痰が絡んだような咳・吐き出すそぶりをするなどの症状が認められることが多いので、普段から呼吸数には注意しておくことをお勧めします!
犬の咳の原因(5)首輪の引っ張りが引き起こす咳
気管虚脱に関連するものも多いですが、強い引っ張り癖や、首輪を飼い主様が強く引っ張るなどを繰り返すことで、危険な刺激を受け、咳の原因になることがあります。
お散歩でぐいぐい引っ張ってる犬、よく見かけます。やっぱり健康にも良くないんですね。
特に高齢のワンちゃんや、気管支炎などを過去に患ったことのあるワンちゃんでは、飼い主様が「それほど強くは引っ張っていない」という認識であっても、毎日のお散歩の際の刺激が繰り返し与えられることで気管が変形してしまい、普通の呼吸が咳の原因となってしまうこともあります。
高齢のワンちゃんでは特に注意が必要ですので、ハーネスを使用するなどして気管(首)への刺激が生じないようにしてあげてください。
なるほど、ハーネスだと首に負担がかかりにくいですもんね。
犬の咳を見分けるには?
犬の咳っていろんな原因があるんですね。それぞれを見分ける方法ってあるんでしょうか。
単回の咳が何度か出る程度のものは、人と同様、犬の場合でもまず、「どんな時に咳をしているか?」「どのくらいの回数 / 時間出ているのか?」を記録し、頻度や回数がどんどん増えていかないかどうか?のチェックを最初に行っていただきたいです。
寝ると出る咳、活動性が増すと増える咳など、何かに関連するものは、その関連する何かが診断の際の重要なヒントとなることもあります。
犬が咳をしているときの様子を動画で撮っておくことも獣医師の先生としては非常に助かることも多いので、ワンちゃんが咳をした際には動画で記録するようにしてもらうといいでしょう。
飼い主が勝手に判断せず、しっかり観察した上で獣医さんに相談、ですね!
犬の咳の予防法、おうちでできること
原因となる病気に多少の差はありますが、気管など空気の通り道が過敏になり咳を発することは人も犬も同じです。
気道の湿潤度を保つことも咳の予防には重要なことになりますので、加湿器などを用いて空気の乾燥を防ぐようにしてあげることが効果的です。
ここで一つ注意しておいた方がいいのは、人ではさまざまなアロマなどが
気持ちを安定させたり、加湿効果を高めて咳を抑える効果が期待できますが、ワンちゃんに使用できるアロマの種類などは非常に限定されますので、使いたい時にはかかりつけの先生に必ず聞いてくださいね。
犬の咳、様々な原因があることがわかりました。命に関わる病気とつながっていることもあるので、たかが咳と思わず、獣医さんに相談することが大切ですね。佐野先生、今回もありがとうございました!
佐野忠士先生 酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授 小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています! |