【獣医師コラム File:2】犬が発症しやすい病気って?予防法や日常生活の注意点など
佐野先生コラム1

佐野先生!私、犬の病気についてあまり知らないのですが…ワンちゃんがかかりやすい病気ってあるのでしょうか?

ワンちゃんが起こりやすい病気 というとワンちゃんだけに起こる病気を思い浮かべることが多いかと思います。もちろんそのような病気もかず多く存在しますが、まずは、人がかかる病気は大部分がワンちゃんもかかる(病気になる)ということを忘れないでおいてください。

 

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えっ!人間の病気と犬の病気は、共通しているんですね。

唯一起こりにくい病気としては心筋梗塞や齲歯(いわゆる虫歯)があります。今回は、小型犬がかかりやすい病気について説明したいと思います。

 

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ぜひ、よろしくお願いします!

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まず、心臓病についてです。

特に小型犬で多いと言われているのは、心臓の弁の一つである僧帽弁(そうぼうべん)という弁の動き・機能が不十分となる僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)という病気です。

 

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心臓病ですね。何歳くらいから心臓病にかかることが多くなってくるのでしょうか?

高齢になってくると認められてくることが多いので6〜7歳齢あたりからは、頻繁な身体検査を行い、異常を早期に発見することをオススメします。

 

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身体検査の重要性がわかりました。若い犬は心臓病になりにくいのでしょうか?日常生活における注意点などはありますか?

若い時にも心臓の奇形、心臓付近の血管の奇形が認められることもあります。心臓病は高齢の病気と思い込まず、聴診をはじめとする健康診断で早期発見を心がけてください。

 

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シニア犬に限らず、定期的な健康診断が大切ですね。心臓病にならないために、気をつけておくことはありますか?

病気の発生の予防とはなりませんが、病気の進行を防ぐ、重症化を防ぐためには体重管理をはじめとする栄養管理が非常に重要になります。塩分の取りすぎや高カロリーには日頃から注意をするようにしてください。

 

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わかりました。栄養管理に気をつけます!

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続いて、関節疾患の話をしましょう。

小型犬で非常に多い関節の病気には股関節のレッグ・ペルテス病というものと、膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)というものがあります。どちらも初期はあまり気づかれることがなく、比較的重症化してから「歩き方がおかしい」「足を触ると痛がる?」のような形で気づかれることが多いです。

 

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関節疾患は初期は気づきにくいんですね…でも、いち早く気づいてあげるためには、どんなことに注意したら良いのでしょうか?

お散歩の前後で足を拭く際などに足(後ろ足)を後方へ引っ張る時に嫌がる / 痛がる(レッグ・ペルテス病)、足(後ろ足)の曲げ伸ばしの際に、膝の違和感(クリッという音?感触を感じる?;膝蓋骨脱臼)などがあった時には要注意です。片足をあげる、スキップをするように歩く(走る)などは典型的な症状ですので、そのような歩き方の異常が認められたらすぐに動物病院で獣医師に相談するようにしてください。

 

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もし関節疾患が見つかったら、どのような治療が行われるのですか?

根本的な治療のためには手術が必要になることが多いのと、原因がはっきりとしているものではないので予防のためにできることは少ないかも知れませんが、早めの診察による発見は重症化を防ぐためにも重要です。

 

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手術が必要…!予防としてできることが少ない分、早めの受診を心掛けますね。

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最後に、神経疾患についてです。

ミニチュア・ダックス・フンドのような足の短く胴の長い犬種(軟骨異栄養性犬種;なんこついえいようせいけんしゅ と言います)では、ご存知かと思いますが、椎間板ヘルニアが非常に多く認められます。

 

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椎間板ヘルニアとは、どのような病気でしょうか?

背骨と背骨の間にある椎間板というクッションの役割をしているものが若い時期から高齢のもののように硬く変化してしまい背骨の中の神経(脊髄;せきずい)を圧迫してしまう病気です。

 

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椎間板ヘルニアとは、どんな症状がでるのですか?

圧迫の程度により、人のぎっくり腰くらいの症状から、足(後ろ足)の完全麻痺まで様々な症状が発症します。

 

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日常生活の中で、注意するべきことを教えてください。

肥満や急な激しい運動(特に急な方向転換)、高いところへの飛び乗り / 飛び降り などが発症の原因とされていますので飼育する上でこれらには注意が必要です。

 

重度の場合には早急な手術とその後のリハビリにより回復が期待できますが、完全に治らないこともある非常に重症度の高い病気と言えるでしょう。

 

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そのほか、てんかん発作のような脳の異常を疑う病気も小型のワンちゃんでは良く認められるものです。

発症の年齢により遺伝性(先天性)、感染性、腫瘍性など主な発症原因が異なってくるのも脳の症状の特徴の一つです。

 

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てんかん発作も小型犬には多い病気なんですね。てんかん発作の症状が自宅で見られたとき、どんな対応をしたら良いのでしょうか…

確定的な診断のためにはMRI検査という特殊な画像診断が必要となります。これらも予防のためにできることは少ないかも知れませんが、発作のような症状が認められた時には動画を撮影しておき、獣医の先生へ見せるようにすると診断の役に立ちますので、少し意識しておくといいかも知れません。

 

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適切なフードを食べていれば、栄養不足や栄養の偏りが原因の皮膚の異常、心臓病、関節・神経疾患の発症は予防することが可能です。

佐野先生コラム1

はい!まずは適切なフードを与えることを意識します。我が家は佐野先生がおすすめしている「ナチュロル」を食べさせていますよ。

しかし、今回お話しさせていただいた病気は適切な栄養管理をしていても起こりうる病気であることをご理解いただき、定期的な健康診断による早期発見ならびに早期治療を常に心がけ、いつまでもわんちゃん達と幸せな時間をお過ごしくださることを願っております。

 

佐野先生コラム1

わかりました!定期的な健康診断をして、愛犬の健康をしっかり守っていきたいと思います。
佐野先生、今日もありがとうございました。

佐野忠士先生

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医麻酔学ユニット 准教授

小さい頃から生き物が大好きで、獣医師になる!という宣言を小学3年生の時にした時には両親はもちろん、親戚一同も「ただしなら・・・」と全員が納得! 獣医師になってからも動物好きは変わらず、どんどん深く深くの愛情へと・・・ 今は、縁の下の力持ち 的な 麻酔管理、疼痛(とうつう)管理、集中治療管理と人間の言葉を話せない動物たちの苦痛を取り除く分野の専門家として働けることを 誇りに思っています!